門前仲町「ひつじの新町や」信州直送、低カロリーで新鮮な羊肉を焼肉感覚でいただく

モクモクと肉が焼かれる煙の向こう側で、石田ゆり子が赤ワインを片手に、微笑みかける夢を見た。
なんでだろうね~、オノちんこと、辛口評論家の小野員裕です。
今回は羊肉。
といっても、ジンギスカンじゃなくて、焼肉感覚で、タレでいただくスタイルだ。
動物性脂肪を摂るとコレステロールが気になるよね。
でも羊肉には青魚と同様、コレステロールの値を下げる不飽和脂肪酸が多く含まれているので、コレステロールが気になるすっぴん美人にはいいチョイス。
それに他の肉と比べてカルシウムが豊富な上に低カロリーだ。
また、アミノ酸の一種であるカルニチンも多い。カルニチンは、体の脂肪を燃焼させる働きがあり、それと筋肉疲労物質、乳酸を減少させるから、運動しても疲れにくいとか。
だから、いまアスリートにも注目されているんだって。
カルニチンは人の体内でも作られるんだけど、それは20歳がピーク、年々その作る能力が低下する。
だから羊肉で補うのがいいのだ。
コレステロールを下げてなおかつ脂肪燃焼の効果大、これ食べなきゃ損だ。
門前仲町駅から清澄通りを越中島方向へ進む。
大横川の「くろふね橋」を渡り、150メートルほど先の左手に、今回紹介する「ひつじの新町や」が現れる。
店内はL字型のカウンター 10席、座敷は6人ほど座れるスペースだ。
羊肉は特有のクセがあり、苦手な人々も多いと思う。
でも、「新町や」の羊肉をいただいたら、その憂いは払拭されるだろう。
ご主人の故郷である信州の新町で飼育され、直送された羊肉は、ことのほか新鮮なのだ。
1人前900円の盛皿には、背ロース、脂背ロース、肩バラ、ヒレ、若干部位の異なるモモ2種と、脂モモ肉2種の全8種類(仕入れにより部位変更あり)。
両面をサっと炙り、醤油ベースのつけダレに浸してパクリと頬張れば、軽やかな旨味が心地よく、
「ああ、羊肉って美味しいもんだな」
と実感できるだろう。
脂身の多い肉は、やや長めに炙り、裏返してさっと炎があがり、火が消えかけたら食べごろだ。
塩コショウ、岩塩、ガーリック塩、好みの塩をちょいとつけていただけば、サッパリとした脂が口中を優しく穢してくれる。これが旨いんだな。
その他、ワイン漬けの羊肉もまた美味で、フレンチマスタード醤油とベストマッチだ。
新鮮な羊が食えるという噂は口コミで広がり、「ひつじの新町や」は連夜大勢の客で賑わっている。
よって入れないこともあるので、当日、電話で確認したほうがベターだろう。
「子供の頃、祖父に連れられて、映画を見た帰りに、羊をよく食べたんだよね。
あれが忘れられなくて、いつか焼肉スタイルの信州産の羊肉専門店をやりたいって思ってたのよ」
と「ゴダイゴ」のタケカワユキヒデ似の小林氏。実に穏やかな人柄で、焼き方を丁寧に面倒見てくれる。
日によって羊肉の刺身が用意されていることも。これも楽しみにしてもらいたい。
さらに、煮込みも秀逸、残った煮込み汁にご飯を入れて、サっとかきこめば、これもまた至福だ。
低カロリーで身体にもいいことずくめの羊肉、すっぴん美人にもぜひ一度食べてみてほしい。
〈店舗データ〉
【店名】ひつじの新町や(ひつじのしんまちや)
【住所】東京都江東区古石場1-2-1新町ビル1F 電話03-3643-5533
【営業】18時~22時
【休日】日曜日
【アクセス】地下鉄東西線・大江戸線「門前仲町駅」4番出口から徒歩5分
取材・文/小野員裕(おのかずひろ)
グルメライター/フードプロデューサー
出版社勤務のかたわら、食べ歩きエッセイの連載や食イベントに関わり、外食産業で注目を集める。17歳からカレーの食べ歩きを始め、「横濱カレーミュージアム」の初代名誉館長、「オールアバウト」のB級グルメガイドを務め、書籍・雑誌・テレビなど数多くのメディアで活躍する〝元祖カレー研究家〟。食べ歩いた軒数は、カレー専門店3000軒、飲食店10,000軒を越す。
その他、食品会社へのアドバイザーや、外食産業のフードプロデューサーとしては、カフェの店舗開発、高級レストランの調理素材、無添加・有機素材を吟味したレトルトのパスタ用ソース、ドレッシングなどの開発に携わる。
またオリジナルレトルトカレー「小野員裕の鳥肌の立つカレー」(MCC食品)は発売10数年以上好評を博するロングセラー。
食べ歩きのブログ「元祖カレー研究家」を日々更新。
主な著書に『カレー放浪記』(創森社)、『魂のラーメン』(プレジデント社)、『ラーメンのある町へ』(新潮社)、『東京カレー食べつくしガイド』(講談社)、『作務衣を着た主人の店に旨いものはない!』(双葉社)、『おうちで本格インドカレー』(東京書籍)、『絶品エスニックバルレシピ』(日東書院)、『明治・大正・昭和のレシピで食道楽』(洋泉社)、『今宵もぷらぷら居酒屋天国!』(学研)など多数。